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涙が止まり始めると同時になぜかその事しか考えられなくなった。
(もう飛んだり出来るのかな…)
とか
(餌はまだ親鳥が取って来てるのかな…)
とか、考えていた。
傍から見れば放心状態、みんな私だけを避けるよぅにしてホームを行き交う。
正気に戻りかけ、羞恥心がもどり初めていた時―――。
何かが巣から勢いよく飛び出した
それも何個も。
(なんだろ…?つばめは大丈夫なのかな?)
飛び出た先を見ると、
何匹かのつばめが空を羽ばたいていた。
(…巣立って行っちゃったんだ…)
そぅ想うと止まりかけていた涙がまた溢れてきた。
つばめの巣を巣立ってしまった鳥達と彼が重なってしまったから。
何の前触れもなく離れて、二度と私の元に帰ってくる事のない彼と
彼には幾度となく尽くしてきたつもりだった…
つばめの親鳥が雛鳥に餌付けをするように、
喜んでもらいたくて、笑顔を向けてもらいたくて、
あまり得意じゃない料理を料理教室に通ってまで覚えた。
つばめの親鳥が自分の餌を我慢するように、
ホントは歩きたくない夜道も我慢して歩いた。
それでも…
「それでもやっぱり巣立っちゃうよね…」
どんなに尽くしたって、どんなに我慢したって、飛び立ってしまったらもぅ帰ってこない
「巣立つ時なんだね…」
巣立つ時…
その時の気持ちは
怒りが沸くわけでもなければ、楽な気持ちになるわけでもなかった
悲しさ。
そればかりが頭を占める。
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