1episode→巣立ち

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涙が止まり始めると同時になぜかその事しか考えられなくなった。 (もう飛んだり出来るのかな…) とか (餌はまだ親鳥が取って来てるのかな…) とか、考えていた。 傍から見れば放心状態、みんな私だけを避けるよぅにしてホームを行き交う。 正気に戻りかけ、羞恥心がもどり初めていた時―――。 何かが巣から勢いよく飛び出した それも何個も。 (なんだろ…?つばめは大丈夫なのかな?) 飛び出た先を見ると、 何匹かのつばめが空を羽ばたいていた。 (…巣立って行っちゃったんだ…) そぅ想うと止まりかけていた涙がまた溢れてきた。 つばめの巣を巣立ってしまった鳥達と彼が重なってしまったから。 何の前触れもなく離れて、二度と私の元に帰ってくる事のない彼と 彼には幾度となく尽くしてきたつもりだった… つばめの親鳥が雛鳥に餌付けをするように、 喜んでもらいたくて、笑顔を向けてもらいたくて、 あまり得意じゃない料理を料理教室に通ってまで覚えた。 つばめの親鳥が自分の餌を我慢するように、 ホントは歩きたくない夜道も我慢して歩いた。 それでも… 「それでもやっぱり巣立っちゃうよね…」 どんなに尽くしたって、どんなに我慢したって、飛び立ってしまったらもぅ帰ってこない 「巣立つ時なんだね…」 巣立つ時… その時の気持ちは 怒りが沸くわけでもなければ、楽な気持ちになるわけでもなかった 悲しさ。 そればかりが頭を占める。
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