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五尺五寸とは現代で言うと168センチ。
江戸の当時では150センチ程が平均身長だったため、かなりの長身である。
その彼を基準に風呂場の高さを考えるとは、なかなか頭が回るではないか…
設計図を見ながら、少しこの娘を見直していた。
そこへすかさず、職人が賃金の話を持ちかける。
「風呂は2~3日でできあがりますが…お代は10両でいかかでしょう?」
この時代の1両は6万円、この風呂建築には60万かかるらしい。
土方は建築の費用は知識がなかったものだから、「ほほう」と答えた。
しかし薫はいつもの無表情な顔で、こう答えた。
「えらく高いのですね?
職人3人の人件費、それに材料費込みで3日で10両。
どんな高級材料を使われるおつもりでしょうか…
薫はそんな殿様が入るような風呂はいりませぬ。
職人の賃金は一日に3人で1両、材料費は原価でお願いしますね。」
小娘の足元を見ていたら、逆に足をすくわれてしまった職人たち。
バツの悪そうな顔をしながら、いそいそと作業に取り掛かった。
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