117人が本棚に入れています
本棚に追加
次の朝土方が目覚めると、薫はすでに身支度を整え台所に立っていた。
包丁を持つ手があぶなっかしく、回りの隊士が冷や冷やしっぱなしだったのだが、怪我もなく無事朝食の時間となった。
「なんだこの沢庵は…
どこかの糞ガキがおままごとでもしたのか?」
朝食の膳にのった山盛りの沢庵を1つ箸で取り、その沢庵をじろじろと眺める。
薫が切った沢庵は綺麗に切れておらず厚さもバラバラ…
中にはちゃんと切れておらず繋がっているものもある。
土方は嫌味を込めて薫に聞こえるように言った。
「土方さま、おはようございます。
沢庵がお好きだと聞きましたので、たくさん盛っておきました。」
土方の嫌味は嫌味でないようで、薫は二コリ笑みを浮かべ土方の湯のみにお茶を注ぎつつ答える。
その笑顔に、広間の隊士たちが色めき立つ。
朝から台所に立ってはいたが、終始無表情で、言われる事に「はい」としか言わなかった彼女の笑顔は、皆に衝撃を与える。
近寄り難い美人なお嬢さんが、身近に感じた瞬間だった。
最初のコメントを投稿しよう!