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職人たちと何やら話しこんでいる薫の首根っこをひっ捕まえ、人がいない屋敷の裏まで連行する。
何が何だかわからないという顔の彼女を見て、とうとう土方の怒りが爆発した。
「てめえ…
その着物だどうしたっ?!
俺の言いつけを守れねえやつはとっとと出て行きやがれっ!!」
地響きがするのではないかという土方の低い怒鳴り声に、流石の薫も驚きが隠せない。
しばらく丸くした目で土方を見ていたが、彼女は静かに話しだした。
「申し訳ございませんでした。
しかし、薫はこの屋敷の門からは出ておりません。
お風呂の建築費が、持ち合わせたお金では少し足りなくて…
すぐに両替屋に行こうと思ったのですが、外出を禁じられていたため、職人さんたちに依頼したのです。
持って来た冬物を全部売ってしまおうと思ったのですが、流石に着るものが全部なくなるのは困ります。
だから余ったお金で、古着の夏物を購入していただきました。」
淡々と話すが申し訳なさそうな彼女の顔を見ていると、土方の怒りも段々落ち着いてくる。
くだらない事で怒った事に気まずくなり土方は頭をボリボリとかく。
それに初めてみる落ち込んだ彼女を見ていると、なぜだか罪悪感まで湧いてくるのは不思議だ。
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