2,優しいお願い

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 何度目だろう。  通りすぎる同い年の視線が痛い。「見ないで!」と叫ぼうかと考えたが、それだともっと注目を浴びるからやめた。 「ああ、もう……」  いい加減、自分に呆れる。  教室の扉が開けられないなんて。  勿論、理由無しにそうなっている訳じゃない。  今朝のニュースが原因だ。  吸血鬼事件の新たな被害者。それが、発見されてしまった。  しかも、昨日の公園で。  やはり今度の事件も二十代の女性で、血液を全て抜き取られていたと、キャスターは視聴者に伝えた。  だけど、奏にとってもっとも重要なのはそこではない。発見時刻だ。  ──今日の明け方ごろ。  イヤに耳に通る女性キャスターの声が、ずっと脳内で反芻される。  奏は知っていた。  第一発見者の新聞配達の人より早く、被害者の姿を確認した人物を。  昨夜に被害者が横たわる公園のベンチを、静かに見下ろしていた人物を。  奏は、知ってしまった。  クラスメイトの──桐島月光の顔をした“誰か”が、真の第一発見者なのだ。  これが示す一つの可能性。  彼が、事件の犯人だということ。
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