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夢を見ていた。
そこはとある山中。
秋になり始めたばかりの山の風景は、まだ夏の面影を充分に残している。
整備されて歩きやすい木々の間を僕は走る。
――あぁ、またこの夢か。
僕はそう思う。
――それでこの倒れた木を跳び越えて前に走って三十五歩、着いたな。
まだ幼く短かった足を懸命に動かし着いた場所、そこには。
猟師の父さんの姿があった。
頭には帽子、少し着込んだ服、そして狩猟銃。
どこかで真剣な表情だった父さんだったが、走ってきた僕の姿を認めると顔を綻ばせた。
そんな父に僕は、
――-父さんっ
と言って大きい体に抱きつく。
そんな僕を父さんはしっかりと受け止めてくれた。
その時、
がさり、
という草を掻き分ける音がした。
父さんと僕が同時に確認して、それが体長二メートル以上ある熊だと言うことを確認して、
僕が悲鳴をあげ、父さんが舌打ちをしながらも銃を構えようとしたその時。
ドウンッッ
後ろ後方から銃声が聞こえた。
その後起きたことは、思い出したくなんてなかったけれど。
後ろの仲間の猟師が撃った、的はずれな弾が。
父を貫いたのは脳に焼け付いていて。
……そして絶対にそこで僕は目を覚ますのだ。
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