自分表裏

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「………ん」 目が覚め、ゆっくりと身を起こす。 額にかいていた軽い冷や汗を拭い、一息ついた。 あの夢は、ずっと昔の記憶。 もちろん父さんはこの世には居ないわけで。 狩猟銃の狙撃を、わざとではないと言え、心臓に受けた父さんは。 「…………」 今更、である。 もう悲しくはない。夢の後に有るのは少しの焦燥感と喪失感だけだから。 着替えをして、机に置いてある携帯に手を取る。 「ん、メールがあるな……」 今は朝の五時。にも関わらず僕の携帯の待受画面には、 『メール 一件』 の文字が。 内容を見てみると宛先は真名からだった。 『おはよう!美狩君!(ちょっと早すぎたかな?) 今日の夜は秋なのに暑かったよね~。わたし凄い汗かいちゃった! パジャマもベタベタだよ~(笑)』 「……………」 おい。 こんなこと男子に言って良いのか。 せめて仲の良い女子に送ってほしいんだけど。 ……まぁ、嬉野 真名とはこう言う人間なのである。 元気活発、男女分け隔てない、性について知識認識共に乏しい、好奇心旺盛。 その明るさが、男女共に人気が有る。 知り合いになって四日で「真名って呼んでね、私も美狩君って呼ぶから」 と言い、そして一友達でしかない僕にいわゆる『おはようメール』を送ってくるのである。 おはようメールは僕だけではなく、他の友達にも送ると言うのだから驚きだ。 よくそんな面倒くさい事ができるな。 しかし、出来れば僕には構わないでほしいのだが……。 遅れてしまったが、返事を返さない訳にはいかないので、『確かに暑かったね。僕は汗をかく程じゃなかったけど(笑)』と返しておいた。
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