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ムラサキ その言葉になんとなく覚えがある気がする。 ただ、それがなんなのかわからない 紫色が好きだったんだろうか? わからない。 「ん?毒なんて入ってないから安心してのみなよ」 はっとした。 手には温かいお茶。 向かいには冷たい彼 どういうことだ? 昨日までの自分は彼が入れたお茶に毒が入っているんじゃないかと疑っていたんだろうか 暖かい煎茶に口付け、熱さが喉をゆっくり通って落ちていく 「…おいしい」 すると、彼がクックッと噛み殺すように笑った 思わず首をかしげる 「能天気だね。君」 「……?」 「いや、馬鹿と言うべきなのかな」 「な…」 今の自分にとって彼はまだ初対面なのに何故ここまで言われなきゃいけないのか。 この人は一体自分の何を知っている? わからない 下手に言い返すこともできない じっと彼を睨む 「ん?言い返さないね。珍しい」 またクツクツと笑う そしてゆっくりと彼の視線が私を捉えた 視線か絡み合う それはとても長い時間に感じられた 体温がないように見える無機質な肌 そこからチラリと見える紅色の舌 やけにその色が妖艶で目立っている
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