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目を開けると、そこには何時もと変わらない天井がみえました。そう、何時もと何一つとして変わらない。
起き上がろうとしました、けど今の私にその行動は出来ません。力を入れる腕が無いから、まだ傷口は痛みました。一週間前に私は両腕を切り落とされたので。
「帽子屋……居るの、でしょう?」
姿が見えないソレに話し掛けると、直ぐ目の前に気味の悪いギラリとした目と死人の様な気味悪い色白の顔をしたソレが現れた。
『はい、姫V』
にっこりと気味悪い顔をして笑うソレ。
本当に気持ち悪いのです。
ゆっくりと私を抱き抱えると起き上がらせてくれたのです。
「帽子屋、私は人間が嫌いなのです。
自分も嫌いなのです」
人間はこの世で最も醜くて残虐で可笑しいくて奇怪な生き物。私はその人間が嫌い、自分も嫌い…何時も何時も帽子屋にそう言っている私。
彼が一度だけ私に持ち掛けたある事を私は頭に想い浮かべていたのです。
帽子屋との契約を。
「帽子屋…私は契約をするのです」
『おや』
また、気味悪くニヤリと笑うソレ。
まるで壊れた器械の様にケラケラと奇声の様な笑いをその後上げたのです。
私にも分かる様に、帽子屋は人の形はしてはいますが人でも精霊でも獣でも無いのです。生きているか死んでいるかのすら私には分からない、理解出来ない存在。
ソレが笑い終えると私の手に向き直ると、膝を床につけ跪く。
『姫の全てをワタクシに』
「私の体も心も運命も、全て帽子屋に捧げるのです。その代わり帽子屋は私の忠実なる僕となるのです」
『フフフ…それでは』
─ゴゴゴゴゴ
キャハハハハハハハハハハハハハ
ギヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ
アハハハはギャハハハハは
辺りが一瞬に暗闇になると、また帽子屋と同じ様な奇声が聞こえたのです。座る私の包帯を巻いた足を掴むのは死人の手…血に濡れたソレが次から次へと私にまとわりつく。
肉が腐った異臭が鼻を刺激したのです。
『ベラドンナ・ルーベルワイト。
ワタクシ共の手中に、収めさせて頂きますね……姫Vv』
「っ」
ずんっ
ずずずっ ズズッ
下に下にと、濡れた地面…地面と思っていたのは血の池。私が座っていた…浮かんでいたの方が正しいのです。
─バシャンッ
多くの死者に引きずられて、私は血の池に落ちたのです。
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