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今宵の月は美しい。
この眩し過ぎる人工の光のせいで星は見えない、だが月は昔と変わらねぇ。月見酒でも…きっと何時もよりも美味い酒が飲めるだろうな。
まぁ
「先ずは、お片付けと洒落込もうかねぇ」
周りには殺気。
大体10~15人位の人の気配。
「俺もまだまだイケるっつー事か?」
冗談混じりにそう口にすると、首に生暖かい何かが触れた。血の鉄の匂いが鼻をくすぐり、俺の中の獣が疼くのが分かった。
殺せ
そう獣は俺に言う。
黒い漆黒の獣。
殺せ 殺せ 殺せ
殺せ
あー、うるせぇ。
時間がその時に限って止まった様に酷くゆっくりになるから、首に当たっただけの刃物をソイツから奪いあげるのは容易い。
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
血ヲ カラダ 殺せ
殺せ
寄越せ
欲しいカラダ
殺せ
わーたよ、テメェが望むんなら
「相手になんぜ、餓鬼共」
さぁて、
祭りの始まりだ。
──────
───
─
朕がそこに来た時には既に手遅れ。いや、先手を打たれたの方が正しのかなぁ?
『スッゴイねぇ』
コレが人間の成せる事?
可笑しくて可笑しくてついつい笑ってしまう。朕は羽根をしまい、人間の破片を摘まみあげた。
ソレはまるで細切れ肉。
ぱっと破片を離すとベチャリと音を立て血の水溜まりに落ちる。辺り一面血の水溜まりで池みたい。
それが月に照らされて地獄図の様に人は恐ろしいと感じる光景なのだけど、朕にはその光景がとても綺麗で美しい。
思わずゾクゾクしちゃう。
『やぁ、久々』
月をシルエットにした彼に話し掛ける。彼とは朕よりも早く先手を打った彼の事。
長髪を結った彼は血にほんのり濡れて色っぽい。
<月の遣い人>
そう呼ばれた一族だけの事はあるね。
彼は男ながらに酷く肌は白いから、紅が良く似合う。
「おう、黒」
でも口調は完全に男。
ん~、朕としてはどちらでもイイんだけどちょっと残念って思っちゃう人間は居るかもしれないね。
黒と朕の事を呼ぶ彼。
朕に名前は無いんだけどね。
彼がそう呼んでるだけ。
『処理どーする気なのぉ?
朕は知らないからね~』
「へいへい」
─パチン
「はい、終了っと」
指を鳴らすと周りには残骸や血の水溜まりは無くなって、固いコンクリートの地面に早戻り。
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