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「ごめんなさい……」
そう告げながらセレは俯き、手を引いた。
だがアルトは首を振った。
「寿命なら仕方ありません」
そう言いながらも、アルトは内心仕方ないなどと思っていなかった。
ドロワの容体の変化にもっと素早く対応出来たら……ずっと側に居たら……そんな後悔ばかりが浮かんでは消えずに残った。
と、そこへドアを叩く音がした。
「どうぞ」
セレが応えると、戸を開けてあのブロンズの髪の女が出て来た。
マリア・ヘリーエ。
薄々気付いてはいた。
この部屋、このベッド。
……間違いない。ここはあの女の家だ。
「……目が覚めたのね」
不安げにマリアは口を開く。
その手には、氷水の入ったボールがあった。
「ええ。熱はまだ少し上がるでしょうけど、明日には落ち着くでしょう。もっとも、彼の回復力は私も目を見張るものがあるので、もしかしたら明日にはもう完治しているかもしれません」
代わりにセレが話し、説明した。
それを聞いてアルトもマリアも、同様に安心した。
とりあえず、尾を引くような風邪じゃなくて良かった。
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