傷跡

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「どうしたの?」 先程あった事は嘘だったかのように、マリアは明るい声で彼女に尋ねる。 それに対してアルトも、どうしたのかと彼女を見る。 ドア越しにしか表情は見えないが、いつも明るいはずのその顔は、酷く不安げで何かに怯えているようだった。 するとそんな彼女を見かねてマリアが動き出した。 彼女の方に近付き、マリアはドアを開いた。 すると彼女は「あっ」と声を上げて廊下の影に隠れようとしていた。 「……大丈夫よ。入っていいわ」 優しく告げながら、マリアは彼女の手を引いた。 そのまま、マリアは彼女を部屋の中に連れ込んだ。 そしてマリアはドアを閉めると、再びこちらに向かって来た。 そして壁にぶつかって落ちた布を拾い上げ、それを再び氷水の入ったボールに入れた。 その最中、一瞬だけこちらを見て、何かいいたげに口を開いたが、結局何も言わずに再びドアの方へと向かった。 「お腹……減ったでしょ?パンとスープを持って来るから、少し待ってて?」 そう言って、マリアは早々と部屋を出て行った。
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