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「……………………」
「……………………」
マリアが出た後、アルトと彼女の二人だけになった部屋は沈黙に包まれていた。
そんな中、アルトは彼女にかける言葉を模索していた。
だがどんな言葉を考えても、アルトの中の彼女は、俯いたきりで何も応えてはくれない。
人の死を見て、恐らく彼女は傷付いてしまったのだろう。
そんな彼女になんと声をかけたらいいのか、アルトには分からなかった。
「ごめんね……」
その時、彼女が沈黙を破った。
「ごめんね」
だがその言葉は、大粒の涙を流しながら発せられたものだった。
その涙に、アルトの胸は締め付けられる。
「……どうしてお前が謝るんだ」
布団の中でまるで苦しみを紛らわすかのように、アルトは無意識に自分の胸を押さえた。
「私は……私は……」
だが彼女は更に涙を流し、しゃくりあげる。
アルトの胸は更に締め付けらていく。
「私、君の力になれなかった……!それどころか……君の大切な人を……」
それを聞いてハッとした。
アルトは思い出した。
ドロワが苦しんでいたその傍ら、意識を失う前に聴いた彼女の唄を。
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