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「くっ……」
アルトは奥歯を噛み締め、ベッドに再び倒れ込んだ。
一体何をやっているんだ。
自らにそう問い掛けながら、手の甲を額に当てる。
あんな事を言うつもりはなかった。
だがそれでも、あの時声を掛けたなら……例えどんな言葉であったとしても、彼女を傷付けていた。
そんな気がした。
なら正解は何だったのだろうか?
声を掛けずにただ黙り通し、苦しみに耐え続けるのが正解だったのだろうか。
それとも、今彼女を追って後ろから抱き締めるのが正解だろうか。
いや、それこそ彼女を傷付ける。
(俺は……結局どうしたらいいんだ)
そう考える内に、アルトの意識は掠れていく。
熱に浮かされたのか、酷く頭が痛い。
アルトは痛みから逃げるように、そのまま意識を閉ざして眠りについた。
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