匂い

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小学校時代の私を 幾つかの言葉で表すのなら、 『優等生』 であり、 『虐められっ子』 であり、 『忙しい子供』 であった。 優等生、というのは事実だけれど、 自慢ではない。 何故なら虐めの標的としても、上位にいたからだ。 私は成績がよく、級長であったり、書道や感想文で毎度入賞していたが、 虐める側にとって、 逆らわないくせに しぶとく潰れない、 余計に怒りを買うようなタイプの性格だった。 自覚はしていたし、もちろん虐め自体がなくなれば一番良かった。 辛くなかった訳でも、 悔しくなかった訳でも勿論なかったのだが、 上手な対処を知らなかったし、 回ってきたバトンを次に渡すのも嫌だった。 せっかく成績もいいし、 クラブや部活も楽しかったから、 休みたくもなかった。 そして相手は、上手く対処する獲物が現れないがため、 最早引っ込みがつかなくなっている節もあった。 彼女ら彼らも、楽しみながら苦しんで葛藤しているように、 見えた。 卒業後、私立中学に進んだ私は、 虐めグループのリーダーと 駅で再会したのだが、 私に負けず劣らず、 真面目な女子中学生になっていたから、 互いに挨拶し、少し話して、 その後は今に至るまで、 会っていない。
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