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祖父が亡くなったのは、
私が小学校の
四年生の時だった。
癌を患っていた祖父は、
長く長く連れ添った
祖母に看取られながら
亡くなった。
最期の日、
夜中じゅう、
祖父は祖母を傍らから離さず、
決して眠らせなかったと聞いた。
「なぁ婆さん、林檎ジュースが飲みたい」
それが最期の言葉だったと
祖母は言った。
この家はきっと壊れていく。
私には
そんな気がして
仕方がなかった。
柱を失った家で、
父は
押し潰されそうだったのだ。
それほどまでに、
祖父母夫婦は、
我が家の均衡を、
見事に保っていたから。
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