好きな奴って、誰?(志摩金造)

2/2
前へ
/15ページ
次へ
「じゃあこれをやっておけばいいんですね?」 「おぉ、頼んだで」 「はい、わかりました」 柔造さんから仕事の書類を受け取って自分の仕事場へと戻る途中。 「千歳」 「あ、金造」 金造は祓魔塾の頃の同級生で、 今も仲良くしてもらっている。 「ちょぉ、こっち」 「えっ?」 不機嫌そうに眉間にシワをよせた金造は、私の腕を掴んで引きずるように引っ張っていった。 「ちょっと、止まってよ金造!」 「いやや」 「なっ…」 即答されてただ引きずられるように歩く私。 金造が機嫌が悪いのはよくわかった。 でも何でこんなに不機嫌なのかわからない。 私が何かしたの…? 引っ張られながらもそんなことを考えていると、人気のない中庭で金造は足を止めた。 「…お前…」 「…?」 振り返った金造と真っ直ぐに目が合う。 「柔兄のこと好きなんか?」 「へっ?」 予想もしていなかった質問に私の口からは間抜けな声が出てしまった。 「だから、柔兄のこと好きなんか!?」 「えっ、ちょっと待って。何で柔造さん?」 「へっ?」 今度は金造が不意をつかれたように間抜けな声をだした。 「だって、さっき仲良さげに話してたやんか…」 しゅん、と怒られて耳がへたった犬のようにその瞳を伏せる。 「別に尊敬はしてるけど、好きってわけじゃ…」 「ほんまか?」 少し潤んだ瞳で見つめられ、この顔は反則だと思う。 「ほんとだよ」 こくりと頷けば金造の周りにお花が咲いた。 「じゃあ、好きな奴って誰?」 「えっ」 金造に決まってるじゃない。 そう言いそうになって口をつぐんだ。 「………」 「………」 見つめ合うだけで、ただただ時間が過ぎていく。 「誰…?」 金造が沈黙を破る。 「秘密」 「なっ…」 誤魔化した私に金造の目が見開かれた。 「ウソ、本当は金造」 「金造って!…金造?」 「そう、金造が好き」 にこりと笑って見せる私に金造は信じられないという顔をしている。 「……嘘やん…」 「嘘じゃないよ」 「ほんまか?」 「ほんまよ」 ふふっと笑みをこぼすと、金造に抱きしめられていた。 「俺もめっちゃ好きや!ありがとぉな!」 「どういたしまして!」 【好きな奴って、誰?】 ……………………………… 金造くんのやきもち .
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加