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その3.シャイなあんちきしょうな僕は綺麗好き。
ざわざわと周りが取り巻いている事に気づいた。
目立つことが嫌いな僕にとってあまりに嫌な現状況
ここから早く抜け出したくて、声を絞り出す。
「な……なんだよ」
風邪でやられたガラガラの声は自分の声であっても目障りに思える。
女の子は聞こえたのか聞こえていないのか解らないが2、3歩僕に近づいた。
女の子の位置は先程より近くなり、見据えるというより見下ろすという形になっていた。
長い髪を垂らし、ジッと僕を見詰める2つの目。
吸い込まれるような瞳に僕は呆然としてしまっていた。
ざわざわと騒ぐ音が遮断され、この世界が本当に止まったような錯覚に陥った。
そんな状態から目が覚めたのは、この子の一つの行動によるものだった。
「う……」
少女から漏れる嗚咽の様なものが呆けている僕の耳に届いた。
ッハ、と我に返った瞬間だった。
「うおええええぇぇぇぇえ!」
その激しい声と共に頭に降りかかるなにか。
それが何なのか気づく前に第二波が襲った。
ビチャビチャと嫌な音を出しながら頭に降りかかる。
ッツーンと酸っぱい臭いが鼻に付く。
そこで察した。
汚物による直下型ボム。
あまり口にしたくは無いが、つまり酔っ払いが僕の目の前で吐いたのだ。
「ぎ・・・・」
それが僕の第一声。
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