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『電話の向こう』
もしもし?
受話器を手に話をする。
聞こえて来るのは無機質な電子音だけ。
何度語り掛けても返事はない。
どうして電話を手にしているのか分からなくなった。
立ち尽くしていると、自然に涙が溢れてきた。
拭っても拭っても溢れ出す涙は止まらない。
しばらくして涙が枯れ果て、真っ白になった頭を少しづつ整理する。
そしてようやく思い出した。
私は悲しい話をしていた事を。
それは彼との別れを告げる最後の電話。
二度と戻らぬ過去との決別。
落ち着いて呼吸を整える。
そして…。
静寂に包まれた部屋の中でゆっくりと受話器を置いた…。
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