無名のアナタと私の関係

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『勝負』     私とアナタは競っていた。   どちらが先にゴールにたどり着くか。   私は一生懸命走った。   アナタも一生懸命走った。   呼吸を乱し肩で息をしながらも懸命に。   私は気付いた。   前を走っていたアナタの背中が近くなっていた事を。   手を伸ばせば掴めそうな距離。   もう少し頑張れば追い越せる距離。   でも、私は思った。   一緒にゴールしたいと。   どちらが勝つのではなく、どちらも勝者になろうと。   ゴールが目の前に迫って来た。   アナタは少しだけペースを落とした。   アナタも気付いたのかもしれない。   一緒にゴールする事の素晴らしさを。   二人は同時にゴールに飛び込んだ。   勝負は引き分け。   悔しくはなかった。   それ以上に嬉しかった。   気が付くと私は笑っていた。   隣りでアナタも笑っていた。   これからもこの人と一緒に走りたいと思った…。
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