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『留守番』
あの子はいつも誰かを待っている。
夕暮れに染まる街の道端で立ち尽くす一人の少女。
両親の帰りを待っているのだろうか。
心配な気持ちになったけれど黙って遠くから見ているしかなかった。
次の日も少女は同じ場所で誰かを待っていた。
今日も少女は一人だった。
しばらくして兄と思われる少年が少女を迎えにきた。
少女はその場を動こうとはせず蹲ってしまう。
少年は大きな声で説得を始めた。
“いくら待っても帰って来ないんだ。父さんたちはもう…この世には居ないんだから”
消え入りそうな少年の言葉を耳にして初めて状況を知った。
死別した両親をただひたすら少女は待ち続けて居たのだ。
事実を受け入れられない少女と現実に向き合う兄。
それを見つめる自分という奇妙な関係ができあがった。
世の中は皮肉だ。
そう思った…。
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