この声が

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ザワザワ、とキャンパスに生える木が風にざわめくと、あたしの髪も合わせて揺れた。 いろんな人が集まる大学は、中々面白い。価値観だって、外見だって、信じている宗教だって違う。 まるで、世界の国を一カ所に凝縮したみたいな感じ。 アメリカはもちろんのこと、いろんな国の文化に触れられるし、すごく楽しい。 「ハイ、愛子」 「ハイ、ティム.」 道を歩いていたら、ティムに話し掛けられた。 ティムはもともとここら辺に住んでいる、金髪で青い瞳の男の子。 入学当初、一人だったあたしに声をかけてくれた、優しい友達の一人でもある。 「ねえ知ってる? 君と同じ日本人が、平日のおやつの時間くらいに、駅前で歌ってるらしいぜ?」 「へえ、知らなかった」 路上でライブをしている人なんか山ほどいるけど、日本人ってところに、興味を惹かれた。 日本の人は、こっちに来てそんなことをやれるほどの勇気は、大抵ないから。
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