418人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
ザワザワ、とキャンパスに生える木が風にざわめくと、あたしの髪も合わせて揺れた。
いろんな人が集まる大学は、中々面白い。価値観だって、外見だって、信じている宗教だって違う。
まるで、世界の国を一カ所に凝縮したみたいな感じ。
アメリカはもちろんのこと、いろんな国の文化に触れられるし、すごく楽しい。
「ハイ、愛子」
「ハイ、ティム.」
道を歩いていたら、ティムに話し掛けられた。
ティムはもともとここら辺に住んでいる、金髪で青い瞳の男の子。
入学当初、一人だったあたしに声をかけてくれた、優しい友達の一人でもある。
「ねえ知ってる?
君と同じ日本人が、平日のおやつの時間くらいに、駅前で歌ってるらしいぜ?」
「へえ、知らなかった」
路上でライブをしている人なんか山ほどいるけど、日本人ってところに、興味を惹かれた。
日本の人は、こっちに来てそんなことをやれるほどの勇気は、大抵ないから。
最初のコメントを投稿しよう!