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魔女は下から上へと徐々に視線を上げる。
左手の指先、投げ出された左腕。赤く染まる肩口。彼が着ている物は学校のブレザーなのだろう。黒い短髪は雨に晒され、捨てられたペットのように惨め。
いや、もしかしたら自分もそうなのかも知れない、と魔女は空を見上げて思う。広がる色は銀色。自分の髪と同じ色だが、それよりはくすんでいる。
鉛色。この空と心にはその名前がよく似合う。
「なあ」
「何だよ」
「助けてやろうか?」
「しつけえ。初対面にしつけえと嫌われっぞ」
一頻りに降り続く雨。翳す傘は無い。互いの内から流れ出る液体は、出来の悪い赤い刺繍を全身に作る。
「そうか。言い方を間違えた」
「何がだ」
それが2人の出逢い。その記憶の彩色。
「助けて――助けて、くれないか?」
思えば、随分とみっともない出逢いだった。
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