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そんな結城先生も今年27歳。そろそろ行き遅れのラベルに包まれてもおかしくは無い年齢だが、噂によるとその話題を彼女に振ると人格が豹変するらしいので、誰もその事については触れない。触れないし振れない。
そうやって魅子に観察されている事も知らず、結城は教壇の前で何やら口を動かしている。勿論、魅子は聞いていない。
退屈そうに周囲に目をやれば、そこにはやはりいつもと変わらぬ風景。背の低い椅子と机が規則的に並び、教室の後ろ側にはほぼ物置と化したロッカー。
机の横にはフックがついており、皆それぞれ赤や黒、ピンク色などのランドセルをかけている。
魅子は自分の赤いランドセルに触れながら、真っ白な上履きに飾られた両足を机の下でぶらぶらと動かす。スカートをひらひらと揺らし、窓の外を見て黄昏るその様子はやけに大人びていた。
ランドセル(これ)に違和感も無くなってしまったな、と思いながら瞳のピントを変え、うっすらと窓に映った自身の姿を嘆く。
周囲の児童と全く同じ。誰もがそれを認める容姿。腰まである長い黒髪が特徴といえば特徴の、どこにでもありそうな容姿。
ごく普通の学び舎、木乃別(きのべつ)小学校。
その3年D組に、姫神魅子はいた。
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