case:壱

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「姫神ちゃあん? 姫神魅子ちゃあん?」 「――は、はい!」  結城の呼び声に気付き、魅子は慌てて返事をする。おかげで素っ頓狂な声になってしまった。 「こないだの算数のテスト、返してるんだよぉ……? さっきから先生呼んでたんだけどなぁ……。姫神ちゃんは先生の事嫌いなんだねぇ……」  児童達の笑い声に教室が包まれる。まさに笑い物、否、笑い者にされてしまった。 「い、いや、そんな事は……」 「え~? だって無視したじゃあん……。先生いじけちゃうよ……」 「うわ、相変わらず面倒くさいのう……」 「んん? 何か言ったかなあ?」 「い、いえ何も!」  心の声。それが呟きとして洩れてしまった。その件について深く踏み込まれても余計に面倒くさいので、魅子は答案用紙を受け取りに教壇の方へと向かう。 「はい、どうぞぉ。姫神ちゃんは今回も百点満点だねぇ! よく出来ましたぁ!」  答案を渡す際、結城がそんな事を宣いながら頭を撫でてきた。沸き起こる児童達の拍手。 (見世物かっ! これは新手のイジメなのか!)
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