吸血姫

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そしてここ日本にも、その吸血鬼が居る。   ある夜のこと。   草木も眠る丑三つ時、この時間帯では人通りも少なく、静まり返っている。 はずなのだが、この日はどこからか、ぴちゃぴちゃと水音が聞こえてくる。 場所は、川沿いの河川敷の道を少し外れたところ。 二人ほどの男がだらりと力なく横たわった女の首に噛み付いている。 男の目は黄色く光り、正気は感じられない。 鋭く尖った犬歯は女の首筋に深く突き刺さり、そこからは血が滴る。 その血を、男たちは啜っているのだ。 彼らは世に言う吸血鬼。 けれどこれらは『狂血(きょうけつ)の鬼』といい、吸血鬼と吸血鬼以外の血が混じった――不純血系統の吸血鬼で、正気を失った者だ。   もちろん、彼らを捕まえる者はしっかりと居る。
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