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ぴちゃ、ぴちゃ、じゅるじゅる、
という不気味な生々しい音のする狂血の鬼の傍に、和服を着ているのに太腿(ふともも)まである長いブーツを履いた少女の影が歩み寄った。
「何をしているの?」
街灯に照らされ、少女の顔立ちがはっきりと浮かび上がる。
歳は十三、四ほどで幼く、肌は白く華奢(きゃしゃ)な体型をしている。
腰までの髪は日本人ならではの黒、狂血の鬼を見据える冷めた瞳は朱(あか)い――紅い血の色をしている。
着ている着物は極端に丈が短く、太股を大胆に露出している。
その足には銃を納めるベルトとポーチの着いたベルトが巻かれている。
静かに立つ少女の手には、吸血鬼が嫌う銀で作られた拳銃が握られている。
華奢で見るからに頼りなさげなおかしな格好をした少女を目にした途端、狂血の鬼たちは表情を蒼白にする。
『吸血姫(きゅうけつひめ)……!』
己の呼び名を言われ、少女は不敵な笑みを浮かべる。
「あら、知っていたのね。わたしがこの地域に居ると知っていてこんなことをするだなんて、いい根性してるじゃない」
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