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さほど距離がなかったせいで目が合い、思わず視線を逸らす。
わざとらしいほど、勢いよく。
元より取り繕うということが下手なわたしは、彼が絡むと、ことさら自然に振る舞うことが出来なくなる。
「佐々木さん」
すぐ近くから落とされた声に、胸がどきりと跳ねる。
その低めの甘い声は、彼のものだ。
「昨日お願いしたのって、もう出来てるかな?」
「あ、はい」
頼まれていた書類は出来たばかりでデスクに置いてあり、手に取り彼へと差し出した。
「ありがと」
ふっと影が差した。
同時に、彼からわたしの肩へと落ちてくる雨滴(あめしずく)。
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