01.呼び声

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_ 木々が生い茂る山道を、ラルクはアスリエを目指して進んでいく。 「ん……?」 前方に人影が見える。 こんな所に人が来るのは珍しい。 見たところ、女の子のようだ。 登山客では無さそうだが…… 女の子は、突然向きを変えると、山の奥へと進んでいった。 「女の子が1人で、こんな所で何をやってるんだろ?」 ラルクは気付かれないように、女の子の後を追う。 ――30分後 かなり奥まで来たが…… 未だに女の子が足を止める様子はない。 (まだ行くのか?) すると、突然女の子が走り出したかと思うと、女の子の姿が消えた。 (あれ?どこに行ったんだ……) ラルクは女の子がいた場所まで走る。 「えっ……」 ラルクは目を見開いた。 崖になっていて、その先に道は無かった。 「まさか、落ちた訳じゃないよな……?」 ラルクは恐る恐る下を覗くが、よく見えない。 その時、ガサッという音がして、ラルクは後ろを振り向く。 そこには、先程の女の子が立っていた。 「良かった。無事だったんだね。君、こんなところで何をしているの?」 「……」 女の子は何も答えない。 「ごめん。恐がらせたかな? 俺はラルク。この近くにあるステールの村から来たんだ。君、名前は?」 「……」 女の子は黙ったまま、ラルクを見つめている。 「なぁ、君……」 すると、突然女の子が頭を抱えて地面に膝をついた。 「嫌……っ!!」 「おい、大丈夫か!?」 ラルクが女の子に近寄ろうとした時だった。 女の子の背中から、黒い翼のようなものが生え、指先からは鋭い爪が生えた。 「なっ……」 ラルクは慌てて後ろへ下がる。 「コロス……」 そう言って、女の子はラルクに襲いかかってきた。 鋭い爪を、ラルクに突き立てようとする。 ラルクは攻撃をかわし、腰に提げていた刀を抜いた。 「一体何がどうなってるんだ? いくら化け物になっても、女の子は斬りたくないな……」 すかさず、女の子はもう一度ラルクに爪を突き立てようとする。 ラルクは刀で攻撃を受けたが、バランスを崩してしまった。 (しまった……! こっちは崖……っ!!) 手を伸ばしたが、遅かった。 ラルクは、崖の下へと落ちていった…… _
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