第三十九章

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………………。 賑やかな京の声も、今日はただ、騒がしいと感じる。 「………。」 「………。」 新撰組総長、山南敬介の脱走。 そしてそれを追う、二人。 いつかこうして二人で京の町を歩いたときとは真逆の、重い足取り。 そう、重く、ゆっくりと。 わかっていた。 むしろ、痛いくらいに伝わっていた。 山南敬介が脱走した理由も、土方が二人を追っ手として向かわせた理由も。 「土方さんは」 そう言いかけた瑠那の口を、沖田の手がそっと塞ぐ。 山南さんに、追いつくな。 二人に山南を連れ戻すよう告げた時の土方の声が、目が、確かにそう叫んでいた。 土方はわかっていた。 山南が、死にたがっていること。 きっと脱走した山南が戻れば、山南を快く思わない伊東やその配下一部隊士達が、彼を切腹に仕向けるに違いない。 そうでなくても、かつて近藤に刃向かった葛山のように、謹慎中に腹を切るだろう。 どちらにせよ、彼らの友である山南は、自ら死を選ぶつもりだ。 友を、あんなに強く、優しい人を 失ってたまるか……!! わかっていたのだ、全て。 だが彼には、感情のまま動けるような立場ではない。 局中法度は、絶対であるのだ。 瑠那の口を塞ぐ沖田の目は、その全てを物語る。 土方をいつでも客観的に、しかし感情的に見てきたのは、彼なのである。
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