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――スッ…… 「結構な,お手前で。」 男は茶碗を置き,黙ったまま腕を組んで何度も頷いた。 「……完璧だ。 お茶もお華も。 流石,全国に名を轟かせる《秋月茶華道教室》の一人娘ですな。」 「そんな……滅相もない。」 少女は,口元に袖を当て上品に微笑する。 「とても美味しいお茶と,完璧な作法をありがとう。 もう少し此方に居たいのだがな……。 生憎私には時間が無くてね。 今日はお暇(イトマ)するよ。 また参っても良いかな?」 「えぇ。是非。 お待ちしております。」 男は,満足そうに頷く。 「では……。」 パタン…… 障子の戸が,閉まった。
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