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足音が徐々に小さくなってゆく。
やがて、完全に聞こえなくなった。
ーー有名な評論家って聞いてたから気合い入れてみれば……。
ただの、ハゲたエロ親父だった……。
そう心の中で呟き、ため息をついて、男が去って行った方に冷たい視線をおくる少女。
秋月 瑠那(アキヅキ ルナ)という。
黒くて長い髪に、大きく潤んだ目。
白い肌には,赤く可愛らしい唇が映えている。
着物から伸びる華奢な手足。
一度見たら忘れられない、美しい容姿をしている。
全国的に有名な、秋月茶華道教室の一人娘。
品もあり作法も申し分ない,更に性格もとても温厚と、評判である。
……表面上は。
しかし、彼女の心の中は決して穏やかなものではない。
ーーあの嫌らしい目、油でテカった顔、無駄に知識をひけらかすことしか考えてない喋り方。
阿呆らしい。
彼女の裏……真髄は、とても毒舌なのである。
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