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(空耳などではないぞ!) 確かに,声が聞こえる。それも、かなり近くから。 「誰……何処なの?」 (此処じゃ!主の手元じゃ!) ――手元って……。 瑠那の手元には,書物しかない。 (まだ気付かぬか!) ――まさか。いや……。有り得ない……。 この書物から、声がしているのだ。 瑠那は、書物を破れない程度に引っ張ったり、叩いてみたり、振ってみたりする。 (こら!止めぬか!乱暴に扱うでない!) また,声がした。 ………………。 瑠那は呆気にとられ,口をポカンと開けている。 開いた口が塞がらないとは、まさにこのこと。 彼女の信じない、非現実的なことが、今、目の前で起きている。
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