第二章

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あれから一年、沿岸部を覆っていた瓦礫は全て撤去され、商店なども建てられ始め、街の皆はめいめい復興に尽力していた。 ノアは、その魔術を遺憾なく行使し、建設の手助けをしている。 で、俺は。 「あ、先生。次、授業入ってますよ」 「知ってる」 あの丘の上に立つ魔法学院で、先生していた。 次の授業、科目は体術。まあ有り体に言えば、体育みたいなものだ。 「って先生。言ってるそばから寝ないでください」 人の安眠を妨げようとするのは、ファイ・エストリア。 「大丈夫だ。寝返りで行くから」 「抱き付きますよ?」 「よし起きた。何やってるんだ?早く行かないと遅れるぞ」 「さすがに泣きそうなんですが」 齢は十五。二期生にして、学院のトップ。 ABCの三段階評価とすると、基礎体力B、応用体術B、戦闘体術C、基礎魔力A、基礎魔術A、応用魔術ⅠA、応用魔術ⅡA、応用魔術ⅢA、召喚魔術Aの、典型的な魔術師(ウィッチ)タイプ。 基礎体力は、持久力や筋力、瞬発力といったフィジカル。 応用体術は、受け身などの、実際の戦闘において必要かつ重要な技能。 戦闘体術は、魔術を使わずに戦闘で勝利を得る為の技術。 基礎魔力は、魔術の持久力。どれだけ長く、どれだけ大規模な魔術が使えるかを判断する項目。 基礎魔術は、最もポピュラーで、子供でも扱える(使いこなす、ではない)もの。 応用魔術Ⅰは、基礎魔術の延長。編み出した下級魔術の操作を主とする。 応用魔術Ⅱは、肉体強化。 応用魔術Ⅲは、大量破壊を目的とした、大魔術。 召喚魔術は最早文字通りなので、説明は割愛。 という科目分けになっている。 細分化すれば切りがないから、あえてこれだけ。 勿論、ノアが使った『戦略級魔術(ストラテジー・マギクス)』第三の歌劇、 SilverBlaze 『銀の一閃』は、応用魔術Ⅲにカテゴライズされる。 なんでも、発動には色々条件やら準備やらが必要らしいのだが、詳しい話は俺にも分からない。 「こんな事で泣く程、柔な精神じゃないだろ」 「私だって、年頃の乙女ですよ?」 「……?」 明らかに成立していない問答に、俺は首を傾げる。 「ま、先生にはいつまで経っても分からないでしょうけど」 そう言うファイの顔は、少しだけ儚げに揺れていた。
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