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さっぱり訳が分からずポカン顔の俺を尻目に、ファイはそそくさと行ってしまう。
そうだった。次は、応用体術の授業だ。
ファイに連れられ、長い長い廊下を歩く。
なんでまったく無駄に広い造りにしたのだろうか。移動が面倒で面倒で堪らない。
内装はいかにもといった近代西洋建築のよう。
内装は、というのは、外装が更に時代を遡ったかのような古城を彷彿とさせるからだ。
そんな校内(城内?)を歩いて、着いた先は広大な平地。東京ドームに換算する気すら起こさせない敷地面積を誇る、学院自慢のグラウンドだ。
広いに越した事はないのだが、広過ぎるのも考えものか。
離れ過ぎたら見えないし。
生徒はあらかた揃っており、不在を決め込むのは一部の不良だけ。
その目は全て俺に向けられていて――ああ、早く始めろという事か。
「じゃ、授業を始める」
授業といっても、最低限これを教えるといったマニュアルは無い。
生徒同士で組み手をさせるだとか、伸び悩んでいる生徒にちょっとした個別指導だとか、そのレベルだ。
この学院の生徒は、フィジカルに恵まれているようで、俺の存在意義は割と希薄だったりする。
「先生、今回もよろしくお願いします」
だから居眠りでもして暇を潰そうかという俺の考えを、ファイはいきなり粉々に砕いてみせた。
「たまには寝かせろ。組み手でもすりゃいいじゃねえか」
「抱き付きますよ?」
「よしやろう。そうさな。今回は五秒だ。いいな?」
「それで構いませんが、なんか釈然としないんですけど」
ぶすっと僅かに頬を膨らませるファイ。
皆の前でもこうだと、もっと人気出ると思うのだが。
「行くぞ?ごー、よーん、さーん、にー、いーち――」
丁寧にスタートまでのカウントダウンをする俺。ああ、なんて生徒思い……冗談。
「ぜろっ」
「可愛らしく言ってもダメで――きゃあっ!?」
刹那、本当に可愛らしい声が響いた。
見れば、ファイが尻餅をついている。
まあ、俺が足を引っ掛けたのだが。
「はい残念。今回のタイムはきっかり一秒でーす。もっと頑張りましょう」
「先生に丁寧語使われると、無性に腹が立つんですが」
何の遣り取りか、と言われれば、制限時間内まで立っていられるか、という一種のお遊びみたいなものだ。
「そう怒るなって」
座ったままのファイに、あえて見下ろす形で声を掛ける。
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