第二章

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「二百年の間、告白をした事もされた事もないって、どれだけチキンで、どれだけモテないんですか」 グサグサッ。 確かに、この二百年、恋愛沙汰に関わりのなかった俺は、ファイの言う通り、チキンでモテないのだろう。 「でも良かったですね。これで非妻帯生活からおさらばですよ?」 「だから俺にはノアが居るんだって」 「さっきも言ってましたが、ノアって……あ、あの、たまに迎えに来るちっこいのですか?ま、まさか先生、ロリコン!?」 家政婦は見た!みたいな目をしながら、わざとらしく手を口に当て、驚くファイ。 一回犯したろかこら。駄目か、喜びそうだし。 「ちがわいちがわい!あいつ、あれで俺よりずっと年上だから!」 「知ってますよ。言ってみただけです」 しれっと今までの件(くだり)を全否定するファイ。 「お前ってさ、一見優しそうなやつだけど、実際話すと遠慮ないよな」 「八方美人って、疲れますから」 「ああ、そう」 きっぱりと断言したファイに、俺は軽く嘆息する。 「意外とこっちの方が、人気出るかもよ?少なくとも、俺は今のお前の方が好きだ」 「先生って、たまにそういう事言うからズルいですよね」 「ズルい?何がだ?」 ファイの言った事に首を傾げると、 「鈍感はこれだから困るんですよ」 深い溜め息の後、そう言った。 「先せーい。体術なんて、意味あるんですかー?」 寝ようとした俺を、先程とは別の声が再び阻害する。 これはあれか、嫌がらせか。 「先生ってば」 今度は、若い少年の声。 この声にも、心当たりがある。生徒だから当たり前である。 「どうした、オスカー?」 オスカー・リットンブルム。ファイと同じ、魔術師(ウィザード)タイプ。 「だから、体術って必要なの?」 素朴な疑問だったのだろう。 後方支援の自分に、体術なんて果たして要るのだろうか、という疑問。 だが、その疑問は、こちらがチームを組んでいる、という前提の下に成り立っている。 これは授業の方針がいけないのだが、この学院では数人で一つのチームを作っている。 目的は、あちらの世界で言うグループ授業に似ているのだが、模擬戦までチームで行ってしまう為、自然と『周りにはいつも仲間が居る』と脳が思い込んでしまう。 実態は全く違うという事を理解出来ないのだ。 そういう点で、ファイのような、誰ともチームを組まない人間は珍しいと言える。
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