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「翔……馬?」
どうやらお目覚めのようだ。
「おはよう、ノア」
「不自然なくらいに自然な爽やか笑顔じゃが、妾の頬に刺さっておるこれは何じゃ?」
「俺の指」
「そんな事は分かっておるわ!」
じゃあ何が訊きたいのだろうか。
「どうしてこんな事をしておるのかと訊いている!」
「いやだってノアが可愛かったからつい」
「か、可愛……っ!?」
俺より年上――でも初なノア。ああ、可愛い。
弄られていた頬を真っ赤に染めて、言葉にならない声を上げる。
「ほら。朝メシにするぞ」
ベッドから降りて、ノアを催促。
頬は赤いままだが、ノアものそのそとベッドから這い降り――ずでん!
痛々しい音がした。
「んな事やってないで、早くしろよ?」
「分かっておる」
ノアは言って、ぶすっと口を尖らせる。
きっと内心は不満たらたらなのだろう。
いつも通りの朝を迎え、いつも通りの生活が始まる。
つまるところ、俺は学校に出勤だ。
「じゃあ、俺はそろそろ行くから。外出する時は、鍵よろしく。ノアも、復興の方、頑張れよ」
ノアより少し先に食べ終わり、身支度を済ませる。と言っても、とりわけ何かをするでもないけれど。
窓から飛び降りるのも、いつも通り。
だって階段なんてやっていられない。
まあ、別に、階段から降りてもいいのだが、階段は、『飛び降りたら怪我する高さの行き来を手伝う物』であり、『高さの違う二カ所を行き来するのに、必ず通らないといけない物』ではない。
よって、条件を満たさない俺やノアは、よくこうやって窓から飛び降りるのだ。
たまに、隣人に見られたりして、恥ずかしかったりするのだが、それは避けようのないリスクだから甘んじて受ける。
「よっ」
無事に着地。
のんびり歩いて丘を目指す。
正確には、その丘にそびえ立つ魔術学院を。
ガラガラと教室のドアを開ける。
俺のホームルーム担任は、二期生。
ファイの学年。というか、ファイのクラス。
「じゃあ、出席取るぞー。オスカー」
「はい」
ちなみに、オスカーも同じクラス。
「次――」
と、どんどん点呼をとっていく。
空席は無いので、欠席者なし。全員出席。いい事だ。
「ファイ」
「はい」
向けられる視線が妙に熱っぽいのは、俺の気の所為だ。きっと俺の気の所為だ。絶対俺の気の所為だ。
「一時間目は……俺の授業か」
基礎魔術学。今日は座学だ。
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