第二章

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「翔……馬?」 どうやらお目覚めのようだ。 「おはよう、ノア」 「不自然なくらいに自然な爽やか笑顔じゃが、妾の頬に刺さっておるこれは何じゃ?」 「俺の指」 「そんな事は分かっておるわ!」 じゃあ何が訊きたいのだろうか。 「どうしてこんな事をしておるのかと訊いている!」 「いやだってノアが可愛かったからつい」 「か、可愛……っ!?」 俺より年上――でも初なノア。ああ、可愛い。 弄られていた頬を真っ赤に染めて、言葉にならない声を上げる。 「ほら。朝メシにするぞ」 ベッドから降りて、ノアを催促。 頬は赤いままだが、ノアものそのそとベッドから這い降り――ずでん! 痛々しい音がした。 「んな事やってないで、早くしろよ?」 「分かっておる」 ノアは言って、ぶすっと口を尖らせる。 きっと内心は不満たらたらなのだろう。 いつも通りの朝を迎え、いつも通りの生活が始まる。 つまるところ、俺は学校に出勤だ。 「じゃあ、俺はそろそろ行くから。外出する時は、鍵よろしく。ノアも、復興の方、頑張れよ」 ノアより少し先に食べ終わり、身支度を済ませる。と言っても、とりわけ何かをするでもないけれど。 窓から飛び降りるのも、いつも通り。 だって階段なんてやっていられない。 まあ、別に、階段から降りてもいいのだが、階段は、『飛び降りたら怪我する高さの行き来を手伝う物』であり、『高さの違う二カ所を行き来するのに、必ず通らないといけない物』ではない。 よって、条件を満たさない俺やノアは、よくこうやって窓から飛び降りるのだ。 たまに、隣人に見られたりして、恥ずかしかったりするのだが、それは避けようのないリスクだから甘んじて受ける。 「よっ」 無事に着地。 のんびり歩いて丘を目指す。 正確には、その丘にそびえ立つ魔術学院を。 ガラガラと教室のドアを開ける。 俺のホームルーム担任は、二期生。 ファイの学年。というか、ファイのクラス。 「じゃあ、出席取るぞー。オスカー」 「はい」 ちなみに、オスカーも同じクラス。 「次――」 と、どんどん点呼をとっていく。 空席は無いので、欠席者なし。全員出席。いい事だ。 「ファイ」 「はい」 向けられる視線が妙に熱っぽいのは、俺の気の所為だ。きっと俺の気の所為だ。絶対俺の気の所為だ。 「一時間目は……俺の授業か」 基礎魔術学。今日は座学だ。
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