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「綺麗に重なるなんて、どれだけお似合いなんだろうね」
出来れば、追い討ちをかけるような事も言わないでほしかった。
「お、お似っ……」
顔を真っ赤にして、呂律の回らない口を動かして、ノアはリッカさんの言葉を反芻……出来ていなかった。
一応、意識してくれている、と認識してもいいのだろう。というか、そうであってほしい。俺の些細な希望的観測だ。
かく言う俺もまた然り。俺たちは、茶化された付き合いたてのカップル然たる紅潮具合だった。
「はい、照り焼きグリル定食二つね」
それからほどなくして、料理が運ばれてきた。
で。
「あの……食べづらいんですが」
「私に構わず、続けちゃって」
「いや、見つめられても困るんですけど」
そういう事だった。
リッカさんは何故か、俺たちから目を離そうとしない。無銭飲食の心配でもしているのだろうか。
「再開してから初めてのお客さんだから、つい」
「繋がりませんからね、そこ。さも自然な流れのように言わんでください」
「あらそう。じゃあ、店の奥からこっそり覗き見するわね」
「もう勝手にしてください……」
折れた。これは、俺が折れた。
それを聞くやいなや、リッカさんこそこそと店の奥に戻り、頭半分だけ出した。
じーっ。
じーっ。
じーーーーーーーーーーっ。
食べづれえ……。
何あの生温かい目線。
だがノアは、それをものともせず、照り焼きグリル定食に食いつく。
いや、単にやけ食いしているだけか。余程、恥ずかしかったらしい。
まあ、食べるしかないのかね。
結論から言えば。
完食だった。
美味だった。
でも、やはりアレだった。
勘定を済ませ、店をあとにする。
冷たく撫でる潮風が、火照った身体に心地良い。
が。どうやら、食後の運動をしないといけなくなったようだ。
食後のデザートではなく。断じて。
店を出た俺たちは、屋根から屋根へと伝う不審な物影を見つけた。
暗くてよく見えないが、それが人だという事は辛うじて確認出来た。
まさか、一年越しの火事場泥棒という事はないだろうが、このまま見過ごす訳にもいくまい。
本当に食後だったので、正直気は乗らないがやるしかない。
そう奮起する。
「ノア。適当に魔術でも編んでてくれ。出来れば、あまり怪我させないやつ」
「うむ、善処する。が、保証は出来ん。翔馬は――」
俺?
俺の仕事は肉体労働だぜ?
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