第二章

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「先生がいけないんですよ?私をこんな気持ちにさせるから……」 ツッコミたいところは色々あったが、その発言はとりあえずスルー。 「しかしまた、どうしたよ急に」 「スルーですか。まあいいですけどね。急ではないです。過去に何度も画策してます。結局二の足を踏み続けてきた訳ですけど」 「出来れば、そのまま踏み続けてほしかった」 悪びれる様子もなく、ファイは淡々と言った。 いや実際、悪い訳では……あるのか。ストーキングしている訳だし。 先生という立場上、生徒の素行には釘を刺しておかねばなるまい。 「今後はこういう事しないように。守れないなら、制裁という措置も考慮しないといけなくなるから」 「そ、それは、性的な意味での制裁ですか……?」 「んな訳ないだろ。頬を赤く染めんな」 まったく、このマセガキは。変な知識入れ込みやがって。 「分かったら、もう帰れ。夜の街は危ないんだ」 「……ふふっ」 俺がそう言うと、ファイは突然微笑を零した。 俺に過失があった――訳ではないだろう。 だとしたら、何なのだ。 怪訝そうに見つめていたからか、ファイはその疑問に答えをくれた。 「心配してくれているんですよね?存外、良いものです、先生から心配してもらえるって」 本当、調子狂うよなあ。 そうやって、年相応な可愛い笑みを浮かべられたら、何も言えなくなる。 誤解のないよう言っておくが、世間一般から見れば、ファイは可愛い女の子である。 見てくれが。で、性格に、難あり。 「……そうかい。それじゃあな」 「はい。今日は、眠れなさそうです」 ……眠れないのか?眠れるじゃなく? そうこう考えている間に、ファイはくるっとターン。俺に背を向けて歩き出す。 それと入れ替わるように、ノアがやって来た。 「やつは何処へ行ったのじゃ?」 「まあ、その……何だ。逃げられた」 素直に、俺の生徒だと言える訳もなく、俺の口から出たのは、そんなありきたりな嘘だった。 だが。 結果から言えば、その行為には間違いがあった。 あそこ――ファイと喋った場面――で、俺はファイを一人で帰すべきではなかったのだ。 送っていくなり、俺の宿に泊めるなりして、目の届くところに置いておくべきだったのだ。 いや、後者はないか。危ないし。主に、俺の貞操が。 そうすれば、あんな事にはならずに済んだのかもしれない。保証は出来ないが、確率は高い。 そう。あんな――酷な事には。
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