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どうやら、敵と認識されたらしい。当たり前か。
魔術を編み、待機させておく。
微動だにしなかった魔人の腕が、僅かに動いた――。
一瞬、私は、何が起きたのか、分からなかった。
呼吸が出来ない。背中が痛い。魔人が――遠い。
ああ、これが本当の魔術。言うなれば、魔法。
咳き込む。血は出ない。まだやれる。
じんじん痛む頭を起こし、状況を把握。
多分、相手が使った魔法に吹き飛ばされ、民家に突っ込んだのだろう。
それにしても、あの速さ、あの早さは反則じゃなかろうか。
魔術を発動する時間さえ、与えてくれないのか。もっと真面目に体術を学べば良かったと軽く後悔。
しかし――。
「『文句を言う前に、まずはやれ』」
いつしか先生が、私に言った言葉。当時、ぐれていた私を救った、先生の言葉。
そう。やるしか、ないのだ。
とは言っても。
「ぶっちゃけ、勝ちは望み薄ですからね。早く、助けに来てくださいよ、先生」
来てくれるかも定かではないのに、何の根拠もなしに、そう口にしていた。
早く、助けに来てくださいよ、先生。
何故か、そう催促された気がした。
誰かに、そう催促された気がした。
それこそ、何の根拠もなかったが、それをものともしない確固たる自信があった。自信というよりは確信。確信というよりは確証。
「早く助けに行くから、死ぬなよ、ファイ」
より一層、足に力を込めて、そう口にした。
愛って素晴らしい。
私は確かに受け取った。先生の気持ちを。先生の意思を。
紛れもない愛の力で、だ。
うん、愛って素晴らしい。未だに一方通行なのが気に食わない。いつか全線開通、上下線開通にしてやる。
だから。
それまでは、死ねない。死なない。死にたくない。死ぬつもりもない。
まだまだ不恰好で、分不相応だけど。いや、分不相応だから、私はあくまで保身的に、街を守りたい。
AngelField
「『可憐な天使は天で踊る』」
出し惜しみは出来ない。最初から、全力で。
そもそも、全力なんて、出した事もなかったが。
だから、換言するなれば、最初から、本気で。
解き放たれるは、不可侵の領域。魔が届かない絶対聖域。
Mother'sLullaby
「『さあ詠いましょう』」
私は歌う。その詩を。
私は唄う。その歌を。
私は謡う。その唄を。
私は詠い、私は謳う。その――神話を。
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