第三章

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「不老だぞ?長寿だぞ?何百年も生きるんだぞ?」 ――ええ。 「その内、飽きるに決まってる。毎日、変わり映えのない日々なんて」 ――そうなったら。 「先生の所へ、夜這いしに行きます」 「たった今、お前への罪悪感はゼロになった!」 まったく、こいつと言ったら。 何も、変わらない。不老長寿になったくらいでは、変わらない。 その事に、少しだけ安堵する。 「あ、でも、実は私微Mなので、ガンガンに攻めてくれると嬉しいです」 ――知らねえよ。と、ファイの頭を小突いて。 俺はファイを抱き締めた。 「先、生……?」 「良かった。生きててくれて、本当に良かった」 今度は失わずに済んだ命を、無くさすに済んだ温もりを、俺は体一杯で感じていた。 と、思い返してみればこっ恥ずかしいイベントを乗り越え、ノアと見(まみ)える。 「改めて。俺の教え子の、ファイ・エストリアだ」 「どうも。先生の愛人です。ファイ・エストリアと言います」 まあ、この辺はスルー。 「で、こっちが、俺とお前の主人(ミストレス)で、ノア」 「うむ。いかにも、妾がお主のミストレスじゃ」 笑顔で威圧を試みるファイと、偉そうにふんぞり返るノア。何なんだこの二人は。キャラが濃過ぎだろ。 「さて翔馬」 「うん?」 「たまにはいちゃいちゃするか」 「よっしゃああぁぁぁぁぁっ!!」 やった!やった!けど何で急に!? てか、割と毎日してる気がするけど何で!? いや、いちゃいちゃ出来るならいいんだけどさ! 「という訳で、退出願おうか、ファイとやら」 ちらっと一瞥して。 ニヤリと笑って。 そう言った。 「それは出来ません」 だが、ここで引かないのがファイ。断固動かないつもりのようだ。 ノアと二人きりでいちゃいちゃ出来ないんだが。 「先生は私の恩人です。恩義には礼儀で返すべきです」 「助けたのは妾なのだがな。礼儀で返すと言うなら、今すぐここから立ち去る事じゃな」 ハンと鼻を鳴らして、何だか凄く偉そうなノア。これはこれでアリなので、俺は傍観に徹する。 「それとこれとは話が別です。とにかく、私は先生と一緒に居ます。一蓮托生です。比翼連理の一対なんです」 対するファイの発言といったら、まんま告白だった。なにそのどストレート。時速二百キロメートルでキャッチャーミットに吸い込まれていくんだけど。 「ぐぬぬ……」 「うむむ……」 なんでこんなに剣呑な空気なのだろうか。
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