第三章

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出会って間もないというのに、険悪だなあ。 「お主はどっちがいいのじゃ!?」 「先生はどっちがいいんですか!?」 二人同時に言った。俺に、言った。俺に? あれ?なにこの死亡フラグ。 ちらりと、ノアを見る。普通に怖かった。鬼も斯くやの形相で俺を睨み付けている。最早、ただの脅しだった。 視線を移して、ファイを見る。逆に怖かった。不自然に自然な笑顔を振り撒かないでほしい。悲鳴を上げなかった自分を褒めたいところである。 「まさかとは思うが翔馬よ、あの小娘を選ぼうものなら、どうなるか分かっておるのじゃな?」 何をされるのか、逆に分かったものじゃない。 まあ、デッドエンド確実ではあるだろうが。 「せーんせい、こんな見た目幼女より、私の方が先生を喜ばせてあげられますよ?いえ、悦ばせてあげられますよ?」 いや、言い直されても、漢字の違いとか分からないから。 それより、あなたは一体何をする気ですか。 「耳年増小娘の言う事なぞ聞くでない。お主は黙って妾を選べばいいのじゃ。お主は妾の人形じゃからな」 「やっぱり先生も何だかんだ言って、溜まってますよね?すっきりしたいですよね?でしたら、私ですよね?ロリ婆なんて、奉仕のほの字も知りませんからね?」 互いに酷い言い草、酷い言われようである。 だから、あなたは一体何をする気ですか。 「翔馬!」 「先生!」 あー、これどうすっかなあ。どっち選んでも死ねるしなあ。 だったら、選ばない事を選ぶべきだろう。 「あ、用事思い出しちゃった。また後でなっ!!」 まあ、姑息な暫定措置だけれど。その場しのぎの時間稼ぎだけれど。 いつかほとぼりが冷めると信じて、俺は二人から逃げるのだった。 「……ととっ」 身の安全を確認し、俺は街をほっつき歩く。 ファイのお蔭で、損害はさほど酷くない。数ヶ月もすれば元通りだろう。後で、改めて褒めてやらねばなるまい。 ……何やらイケナイ要求を迫られそうで、気が引けるが。 そんな未来を想像して、思わず苦笑したところで、見覚えのある顔を見つけた。 ここから少し遠く、距離にして百メートル程だろうか、そこに、リンが居た。 いや、まず目についたのは、数人の男子。その輪の中に、リンが居たのだ。 リンはへたれ込んで、反抗的な目で睨んでいるし、男子たちはヘラヘラ笑っている。友好的でない事は明らかだった。 これは、口を挟むべきだろうか。当人たちで解決出来るなら、それでいいのだけれど。
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