第一章

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すぐに満開のかんばせを覗かせてくれる。 「そうだな。俺も、それがいい」 俺はそれに、気付かない振りをした。 翌日。 開放された俺の視界一杯に映り込むのは、紛う事なき肌色。 つまり、ノアの太腿だ。 ――ああ、舐めたい。舐め回したい。 そんな欲望を抑えつけて、俺は重い身体を起こす。 低血圧で、頭はほわほわ、身体はふらふらだ。 まだ覚醒しきっていない身体で、ノアを揺すり起こす。 「おいノア、朝だぞー」 ついでに声も掛けてやる。 朝からこんな美声を聞けるなんて、ノアも――いや、自重しよう。 「んっ。んあっ」 身体を伸ばし、腕を斜め45度くらいに突き出す。 その仕草が、妙に色っぽかった。 「ん?」 ノアのイントネーションが、疑問になる。 そこで、ノアは気付いた。 「おおおお主、一体どこを触って……」 言われて俺も気付いた。 ふにっ。とりあえず感触を堪能しておく。 「ひゃうっ」 うん、いい声だ。 再びふにっ。再びいい声で鳴いてくれる。感触最高、感度も良好のようだ。 もう死刑は決定しているのだから、せめてもの餞別。仮初めのエデン。 「ひ、ひゃうっん!……じゃ、じゃなくてっ!翔馬、言い残す事はあるかっ!?」 どうやらもう終了のようだ。 残念。もっと触らせてほしかった。 「そうだな。良い嫁になれるぞ」 「死にさらせーっ!」 死にさらせ。そんな言葉を、女の子が使っていいのだろうか。ただし、見た目だけ。 そして俺は、そんな女の子に“壊され”かけた。ただし、見た目だけ。 「なあ翔馬。妾が、侮辱されているような気がするのじゃが……気のせいかの?」 「気のせいじゃね?」 こういう時は、適当にあしらっておくに限る。 適切に、ではなく、なおざりに、であるが。 ほのかに仏頂面なノアも可愛い。今なら、カメラを買いたくなる新婚ホヤホヤのお父さんの気持ちが分かる気がする。 撮りたい、撮りたい。ああ、盗撮(とり)たい。おっと、俺の本能が疼いているようだ。 今にでも襲ってやりたいのはやまやまだが、ノアに嫌われたら俺は生きていけないので、ここは自重。これ大事。 「そろそろ発とうかの」 ノアの言葉に、「そうだな」と小さく肯定する。 一体、何回の黎明だろうか。最早、数える事もままならない。 いや、経過した年数を計算すれば出て来るには出て来るのだが。 二百年は経ったが、姿形は出逢った当初――高校生のまま。 俺はやはり不老なのだと思い知る。
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