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「この建物は何なんです?」
「こちらは弓道場です。
分かります?
こーやって矢を引いて、こういう的に当てる競技なんですけど。」
身振り手ぶりを駆使して丁寧に説明してくれるのだが、弓道なんてどちらかと言ったらメジャーな競技だ。
分からないヤツの方が少ない。
そんな事をわざわざ説明してくれるなんて、まさかこの人天然ちゃんか!?
そんな人類学的絶滅危惧種を「弓道くらい知ってるわ!ボケェ!」なんて言って悲しませてはアレなので、俺は満面の笑みで返す。
「分かりますよ。」と。
「……こんなに朝早くから掃除なんて、平井さんは今日の掃除当番か何かなんですか?」
「いえ、実はわたくし弓道部の副部長なんですが、寮長の仕事が忙しく、なかなか部活に参加出来ていないんです。
ですから、こうして暇な時間を見付けては弓道場の掃除をしているんです。」
まるでタンポポの綿毛のようにフワフワとした笑顔を向けてくれる。
いや、暇な時間見付けたなら練習しなさいよ!
頑張りを向けるベクトルがおかしいよ!
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