14人が本棚に入れています
本棚に追加
「菜緒さん?」
さすがにコリンは気づいた。
だが、意外に反応が薄い…期待はしていなかったが寂しくはあった。
「…仕方ないなぁ。」
あとに続く言葉も寂しい。
同年代の青春のリアクションを期待するのは菜緒の悪いクセである。
コリンは菜緒ではないのだが。
「コリンくん!」
だが、しばし女子の群れからのモミクチャになるコリン。
「…………。」
ピカッ!
その中で紫色の光がほのかに光った気がした。
「あ、チカラを使った。」
慎悟だけは分かった。
「愛してる!」
女子は互いが互いを抱き合い目をハートマークに変えている。
「良い夢を見てもらいましょう♪」
満面の笑みで恐ろしいことを口にするコリン。
「幻術か。」
慎悟がため息をついた。
「もちろん、バレないようにやりますよ。」
「初心者じゃないね?」
慎悟は手口の鮮やかさから何回か幻術で逃げていると察した。
トラブルを幻術で逃げるってあまり倫理的に良くない。
「コリン…。」
嬉しいやら怖いやら…複雑な気分の菜緒。
「だから大丈夫ですよ。」
落ち着かせるようにコリンは菜緒に念を押す。
「それよりも。」
ややあって、コリンは菜緒に質問を始めた。
「菜緒さん、僕があげたカード…いつも持ち歩いてますか?」
何を言うのだ、この男は。
ファンタジー世界だけに魔法の品だとは考えるが。
「何かあるのかい?」
慎悟がコリンに問いかける。
「ええ、カードはエンフォートの宝であり…戦争が終わらない原因です。
ああ、返さなくて良いですからね…カードはあなたを守ってくれるかもしれませんから。」
何か気になる言い方だ。
最初のコメントを投稿しよう!