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かなり手酷い目にあったのか…いきり立って、まくし立てる担当の役員。
「住民の生命と生活より、町の景観を重要視するような都市はおかしいとか!
自然からの警鐘を啓発するファンタジーアニメの観すぎだとか!!
どう考えても裏金団体でしょうかとどれだけ叩かれたと思っているんです?」
楓座は表向きには特に市政に関わっていない。
関わっていようがいまいが癒着と思われるだろうが、一市民のためにこれ以上のワガママは通せないのだ。
なまじ一人を許すと俺も私も何とかしろと言い出すので、秩序が成り立たなくなる。
だから多少言葉が荒れても、文句は言えない…一人だけを助けるわけにはいかない。
民主主義は超能力者にとって残酷な制度である。
そもそも、国が民主制に変わってから超能力者はとかく住みにくい世の中になったのではないかと思う。
ちょっとしたことで事情も知らぬ人間が好き勝手言い出して暴れるから。
楓座当主はやっぱり町の住民との戦争を考えた。
やってきた人間をどこともしれない異空間に投げ飛ばすとか。
だが、それでも。
「…撤去は出来ません。」
これだけを言うしかない。
神のチカラを分けてもらったとはいえ、町の人間すべてを異空間に投げ出すだけのチカラはさすがに持っていない。
人数が半端ないのだ…楓座の天才児でも一度に10人ぐらいが限度。
町の人間は少なくともその5000倍はいる。
「ならば仕方ありませんね。」
所有権があろうが、強制撤去しそうな勢いだった。
こうなればぶっちゃけるしかない。
こうして、600年続いた楓座の歴史は新たな局面を迎えることになった。
ひと月後…役員と工場の作業員が来て、楓座の屋敷を暴き…中にいたものと楓座の秘密を知られることになる。
とはいえ予想しているような迫害になることもなかったが…人間扱いされることもなかった。
楓座は市の秘密部署に組み込まれる代わりに、表向きに大樹は守られた。
事情を知った市を味方につけられたら、市民も口うるさくは言えない。
松醐市長の名のもとに新都市計画が着手され、葡萄酒橋市は3年でその景観と様相を大きく変えたのだった。
それが不幸の始まりとも知らずに…。
そして、現在に至る。
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