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「松醐さん…その話は後で。
それより、一学期の期末試験が終わったから少し羽根をのばさないと。」
オブラートに包もうが、人前で話して良い話じゃない。
「あっ、ごめんなさい!
でも、期末試験が終わったわりには楽しくなさそうで。」
裕奈は慌てて口を押さえた。
本当にうっかり者だと思う。
とにかく、期末試験が終わったならもっと楽しい顔をするべきだが慎悟にはそれがない。
その証拠に慎悟と裕奈のクラスは浮かれて大騒ぎだ。
彼らが通う繋(つなぎ)高校はもともと自由な校風で、生徒のテンションが高い。
公立高校で様々な生徒が入学してくる…基本的に懐が広くておおらかな生徒が多い。
ただし、基本的に不平不満ははっきり口にするのでもめ事も多いことでも有名だ。
誤解なぞ生まれたら手に負えないが、基本的に気が良い奴らなのである。
『留学生』が入ったとしても大抵は受け入れてくれるだろう。
そんな中で慎悟は馴染めないのだ…大樹の件もあろうが、彼は基本的に人間との付き合い方が分からない。
超能力者の彼は普段から壁が出来ているから、他人に誤解されやすいのだ。
今や慎悟は、裕奈以外に人間関係を築くのは諦めている。
このあたりは宿命である…別に構わないけども。
「構わないさ。」
慎悟はやるべきことをやるまでだ。
この町と自分たち楓座が、穏やかに生きていければ構わない。
「楓座くん。」
裕奈も婚約者のわりには名字で呼ぶなどよそよそしい。
やはり、慎悟との微妙な空気と距離感を感じていたのだった。
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