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「おはよう、慎悟くん!
今日はお父さんを、どうかよろしくね!」
隣のクラスから、やけにテンションの高い女子高生が入ってきた。
翡翠色の肩までかかる髪の毛を少し結わえた女の子。
目が大きく、ひとなつっこい。
彼女はツナギの女子高生で有築 奈緒(ありつき なお)という。
今回の調査隊のメンバーの一人の娘で、こちらも多少の事情を心得ている。
テンションにはついていけないが何より人を惹き付ける魅力があるので、嫌われ者の慎悟にはありがたい友人だ。
情報収集や人払いに役に立つ。
ウマが合わないが無下にも出来ない。
つかず離れずの仲だった。
「ちょっと奈緒ちゃん!
喋り過ぎよ!」
結奈が慌てて止めた。
少々奈緒は口が軽い。
「あ、ごめん。」
悪気は無いが、愛嬌があるのであまり叱れない。
奈緒は憎めない女子だ。
「松醐さんも声が大きい。」
慎悟は人差し指を立てる。
真面目な結奈は、多少ムキになっているかもしれない。
教室がざわめき始めた。
「あーあ。」
険悪な雰囲気になったので、奈緒はいち抜けた。
逃げるのも早い。
「ちょっと奈緒ちゃん!」
言いたいことはたくさんある結奈。
だが、今まで奈緒が捕まることはなかった。
誰かを引き付けて、さっさと去っていく。
「もう…何しに来たのよ!」
何をしたのか分からない。
奈緒は、目的なく動いているだけだろうが。
「まぁまぁ。
単に挨拶だけだろう。
挨拶は、人間関係の基本だからね。」
事情があるとはいえ…嫌われ者のお前がそれを言うか。
あまりしっくり来ない。
多少の憤懣を抱えたまま、結奈は授業の支度を始めた。
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