留学生

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「…入り口の神と出口の神。 我は二人の築いた橋を渡る、神子の血筋に連なる者。 我の先に繋がるは世界の扉…異なる世界は繋がりにて混じり…新たな何かを創り出す。」 慎悟の身体が光に包まれる。 空間を渡るための渡り橋の言霊の有無は自由だが、慎悟は言霊があった方が集中しやすい。 「おお…!」 歓喜にうち震える、有築隊長。 フワリと慎悟の身体が浮く。 「これから、どこかの異世界に跳びます。 移動中に手を離すと異世界との狭間に堕ちるので、気をつけて下さい!」 これは大切なことだ。 結構圧力があるから手を離してしまうかもしれないが、耐えねばならない。 「分かった!」 全員が同意する…楓座がいなければ帰れない。 慎悟ではなかったが…彼の両親が跳んだときは散々な目にあったらしい。 その両親も、あまり家に帰らない。 市長と話をしていることが多かった。 「行きます!」 浮きながら水平飛行のポーズを取る。 3…2…1…! 宇宙ロケットの発射実験を見るような高揚感。 GO! 光はさらに強くなり…慎悟と調査隊は異世界に跳んだ。 調査隊の人たちと、しっかりと手を繋いで。 どこかも分からない世界なのだから、せめて空気は調べておくべきだった。 しかし楓座の空間移動は飛行型なのだから、人間が住めないような世界には当たらない。 跳びながら人間の生存を確認するからである。 稀に人間以外の生命体のオファーもあるが、たいていは人間にとって凶暴なので逃げる。 そんなこんなで、彼らは普通に人間が生活している世界に着陸する。 ものものしい雰囲気の城が見える城下町だ。 その奥はリンゴの並木が生い茂る農林地帯。 さらに見渡せば、山岳に囲まれた自然の要塞だ。 まるで、ファンタジーゲームの中のような世界である。 「こんにちは。」 その世界の住民がこちらに話しかけてきた。
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