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確かにうっすらとだが、コリンの腕や手は傷だらけだ。
軍事国家の人間ってみんなこうなのだろうか?
「穏やかなものだよ。
うちには3人子供がいてね…すぐに仲良くなれると思うよ。」
仲良くなれる…その言葉はコリンは嬉しそうだった。
「それは楽しみですね…僕は家庭教師の先生や剣の師匠ぐらいしか付き合いがなくて。」
コリンには同年代の友人はいないという。
体調が悪いこともあったが、その理由までは詳しく教えてくれなかった。
調べようとも思わなかった…コリンのような友好的な人物を連れてこれただけで十分だったのである。
「じゃあ、行こうか。」
有築隊長はコリンを連れて先に去っていった。
ポトッ!
その時、コリンの服のポケットから黄金色のカードが落ちた。
「パトリシア先生…こっそり入れていたんだ。」
カードには盾と雷のような模様が刻まれている。
高級そうだが、コリンにはあまり愛着はないみたいだ。
「それ…。」
慎悟が拾って渡した。
コリンはちょっとためらいがちに受けとる。
「お守りですが…僕には無用なものですからね。
良ければ家賃代わりにでもお納めください。」
そのまま有築隊長にくれてやった。
「そんなもったいない…。」
無欲な隊長はそんなものは受け取らなかった。
たぶん菜緒行きにはなると思うが。
それにしても、己の常識は世界の非常識である。
他の世界に接触するなら、せめていろいろ調べてからにしてもらいたい。
誰も気づかなかった…義務教育などないエンフォートで家庭教師と剣の師匠がべったりくっついているなんてよほど高い身分の人間でないとあり得ない。
もしかしたら、後に誘拐の容疑で戦争を仕掛けられるだなんて彼らは何も考えていなかったのである。
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